変わった方がいいとわかっていても、人が動けない理由

「わかってはいるんですが
なかなか動いてくれなくて」

経営者からこの言葉を聞くとき
たいてい続きがあります。

何度説明しても変わらない。

研修を受けた直後は動くのに
一週間後には元に戻っている。

本人も
「やった方がいい」とは言っている。

それでも
日常の行動は変わらない。

こういうとき
「本人の意欲の問題だ」と
考えてしまいがちです。

やる気があれば変われるはずだ。

わかっているなら
動けるはずだ。

そう考えると
動かない社員が
「問題のある人」に思えてきます。

正しいとわかっていても、元に戻る

ただ、これは社員だけに
起きる話ではありません。

自分自身も
「やった方がいい」とわかっていながら
なかなか動けないことが
あるのではないでしょうか。

新しい習慣を始めようとしたとき。

長年のやり方を変えようとしたとき。

正しいとわかっていても
気づけば元の動きに戻っている。

これは、意欲や能力の話ではありません。

人は、新しいことを始めるとき
得られるものよりも
失うものや手間の方を
大きく感じやすいところがあります。

慣れた方法を手放すことへの不安。

うまくいかなかったときのリスク。

周囲からどう考えられるかへの懸念。

こうした「変化のコスト」が
頭の中で実際より大きく
見えてしまうのです。

だから
「わかってはいるんですが」
という言葉が生まれます。

正しさは理解している。

でも、動き出すための一歩が重い。

これは、弱さではなく
人が変化に向き合うときに
自然に起きやすい反応です。

動かない人ではなく、動きやすい場を見る

だとすると
「なぜ動かないのか」を問い続けることより
「どうすれば動き出しやすくなるか」を
設計することの方が
実際の変化につながります。

たとえば
変化の最初の一歩を
極端に小さくする。

新しいやり方を試す場面を
あらかじめ決めておく。

うまくいかなくても
戻れる余地を残しておく。

こうした設計があると
変化に伴う不安や負荷が小さくなり
動き出しやすくなります。

「動かない人」を変えようとするより
「動きやすい場」を整える方が
結果として組織は変わっていきます。

こうした傾向は
行動経済学の分野で
「現状維持バイアス」と呼ばれています。

人は、新しい選択肢に
メリットがあるとわかっていても
今の状態を続ける方を
選びやすいことがあります。

制度設計や研修設計を考えるとき
この特性を前提に置くかどうかで
打ち手の方向が変わってきます。

「うちの社員が動かないのは
なぜだろう」と感じている方は
ぜひ一度、その背景を
一緒に見立ててみませんか。

意欲の問題なのか。

使い始める場や手順の問題なのか。

そこから整理していければと思います。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。