
「言ったんですけどね。伝わっていないみたいで」
経営者からよく聞く言葉です。
朝礼で話した。
会議でも伝えた。
個別に話した幹部もいる。
それでも
現場の動きは変わっていない。
社長の言葉が
なぜか別の話になって
現場に届いている。
こういうとき
「伝え方が悪いのかもしれない」と
考える経営者は多いです。
もっとわかりやすく話せば
届くのではないか。
資料を作った方がいいのではないか。
繰り返し言い続ければ
いつかは伝わるのではないか。
ただ、伝え方を工夫しても
なかなか変わらないことがあります。
その理由の一つは
「伝えた」と「届いた」が
そもそも別のことだからです。
同じ言葉でも、意味が違って受け取られる
たとえば、社長が
「もっと挑戦してほしい」と
言ったとします。
社長の中では
失敗してもいいから
新しい動きを増やしたいという意味かもしれません。
でも現場では
「また成果を求められている」
「今でも忙しいのに、さらに増えるのか」
と受け取られることがあります。
言葉は同じでも
意味が違う。
これは、どちらかが
間違っているのではありません。
向き合っている前提が違うから
起きることです。
経営者が言葉にする想いは
経営者が考えている前提の中から生まれます。
会社の将来。
市場の変化。
自分が感じている危機感や期待。
そうした文脈の中で選ばれた言葉が
現場に届いたとき
受け取る側は
自分が向き合っている現実の中で
その言葉を解釈します。
伝えた側の意図と
受け取った側の解釈は
自然にずれるものです。
丁寧に伝えたからといって
このズレがなくなるわけではありません。
間に、誰もいない
だとすると
問うべきことが変わります。
「もっとわかりやすく伝えるには」ではなく
「経営者の言葉を、現場の言葉に置き換える人がいるか」です。
会社の中には
たいてい経営者と現場の間に
誰かがいます。
でも、その人がやっているのが
「社長はこう言っていた」と
そのまま伝えることだけなら
そこには何も置き換わっていません。
経営者が考えている前提と
現場が向き合っている現実。
その両方を知ったうえで
言葉を選び直す人が
まだいないのかもしれません。
伝えることと
間をつなぐことは
別の仕事です。
そこが空いたままだと
どれだけ丁寧に話しても
言葉は経営者の手を離れた場所で
別の意味に変わっていきます。
「ちゃんと伝えているのに
なぜ現場に届かないのだろう」
と感じている方は
社長の言葉そのものより先に
確認したいことがあります。
経営者の言葉は
弱くないのかもしれません。
受け取る側の現実に合わせて
置き換えられないまま
届いているだけかもしれません。
社長の言葉を変える前に
その言葉がどこで
どんな意味に変わっているのか。
そこを見るだけでも
次に整える場所が
見えやすくなります。
その間に、誰かがいるかどうか。
そこから
一緒に見立てていければと思います。















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