離職が落ち着いた職場で、最初に変えたこと

ある介護施設の経営者から
こんな言葉をもらったことがあります。

「小林さんと話すようになってから
自分も職場に行くのが
楽しみになりました」

とても嬉しい言葉でした。

でも同時に
少し胸が痛くもありました。

それまでの日々が
どれほど孤独だったかを
想像したからです。


その施設は
スタッフ20名ほどの介護事業所でした。

現場のスタッフは
利用者のために
真剣に働いていました。

それは本当のことです。

ただ経営者から見ると
どこか話が届かない感覚がありました。

生産性の話をしても
ピンとこない顔をされる。

人手不足が進んでいく中で
このままでいいのかと感じていても
その危機感を共有できる人がいない。

現場は現場で一生懸命です。

経営者も
会社をよくしようと必死です。

悪者なんていません。

それでも経営者は
深いところで
ひとりだったのだと思います。

問題は、現場の意識ではなかった

ここで少し
立ち止まって考えてみます。

この状況で
何が問題だったのでしょうか。

スタッフの意識が
低かったのでしょうか。

経営者の伝え方が
悪かったのでしょうか。

私は
そうは見ていません。

問題は
経営と現場をつなぐ役割が
まだ整っていなかったことです。

名目上のユニットリーダーはいました。

ただ
そのリーダーが何をする人なのかが
言葉になっていませんでした。

現場のエースとして動くことが
暗黙の期待になっていて
経営の視点を持つことまでは
明確に求められていなかった。

これが
すれ違いの構造でした。

最初に変えたのは、経営者自身の時間だった

最初に変えたのは
制度でも給与でもありません。

まず取り組んだのは
経営者自身の時間の使い方を
見直すことでした。

最初は
こんな反応がありました。

「ただでさえ忙しいのに
これ以上何かをやる余裕はない」

それは
とても自然な反応だと思います。

だからこそ
まず業務を整理しました。

緊急度と重要度で
日々の仕事を見直していくと
本当に経営者が向き合うべきことと
現場に任せられることが
少しずつ見えてきました。

任せられるものは
現場に渡していく。

そのうえで
緊急ではないけれど重要なことに
経営者自身の時間を使えるようにする。

これが
最初の一歩でした。

リーダーの役割を、言葉にする

次に取り組んだのが
リーダーの役割を
言葉にすることです。

経営者は
リーダーに本当は何を期待しているのか。

リーダー自身は
何に戸惑っているのか。

その間にあるズレを
一緒に言葉にしていきました。

そこで見えてきたのが
経営者の考えを現場に届け、
現場の声を経営に届ける役割でした。

利用者に質の高いサービスを
届け続けるためには
現場が回り続ける必要があります。

そのために生産性を意識することは
現場を大切にすることと
矛盾しません。

むしろ
現場を守るためにも
必要な視点です。

そういう見方を
経営者とリーダーが
対話を重ねながら
少しずつ共有していきました。

言葉が変わると、視点が変わり始める

変化は
すぐには起きませんでした。

でも
話す時間を重ねていくうちに
リーダーの言葉が
少しずつ変わってきました。

「どうしたらもっと
回るようになりますかね」

現場の中だけを見ていた視点が
少し外に向き始めた瞬間でした。

採用の話が出なくなった瞬間が
あったわけではありません。

気づいたら
そうなっていた。

定着している職場の変化は
たいていそんな風に起こります。

そして数か月がたったころ
経営者がこう言ってくれました。

「はじめて
同じ目線で考えてくれる人が
できた気がします」

「今までも仲間という意識でやってきたけれど
最近、職場に行くのが
少し楽しくなった」

この言葉は
今でも強く残っています。

最初から
大きな制度を変えたわけではありません。

給与を上げることから
始めたわけでもありません。

経営者自身の時間の使い方を見直し
リーダーの役割を言葉にして
対話の回数を増やした。

その積み重ねの中で
組織は少しずつ変わり始めました。


自社に置き換えるなら
まずはこの問いから
考えてみてもよいと思います。

経営者の視点を
現場に届ける役割が
見えているか。

その役割が
具体的な行動レベルで
言葉になっているか。

離職の話が続くとき
採用より先に
見直せる場所があるかもしれません。


グロウスリーでは
経営者の想いや
現場で起きていることを
一緒に言葉にしながら、
組織づくりを伴走しています。

「リーダーに何を任せればいいのか
まだ整理できていない」

「うちの現場と
どう話せばいいかわからない」

そんな段階でも構いません。

まずは
今起きていることを
一緒に言葉にするところから
始めてみませんか。

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